【開催レポート】情報コースの新任教員講演会
講師:兒島 雄志 准教授 (香川大学創造工学部情報コース)
講演題目:不良設定トモグラフィ逆問題へのアプローチ: 連続時間力学系に基づくアルゴリズム設計と深層展開
2026年4月13日(月)に、香川大学創造工学部情報コースにおいて「新任教員講演会」が、オンライン(Teams会議)にて開催されました。本講演会は、情報コースに新たに着任した教員の研究分野や教育への考え方を学内外に広く共有することを目的として企画されたものです。当日は、大学関係者を中心に約40名の参加がありました。
香川大学では、情報分野を取り巻く社会的ニーズの高まりを背景に、入学定員の拡充とあわせて教育・研究体制の強化を進めています。本講演会は、そうした取り組みを具体的に紹介する機会として位置づけられています。
香川大学創造工学部情報コースでは、数理、AI、ソフトウェア、ネットワークなど、多様な専門分野を横断的に学べる教育体制の構築を進めています。次世代型の情報技術者の育成を目指し、理論と実践の両面から学びを深められる環境づくりに力を入れています。今回の新任教員講演会は、こうした体制強化の一環として、新たに加わった教員の研究背景や問題意識を共有し、学生や教職員が今後の学びや研究の方向性を具体的にイメージすることを目的として開催されました。
登壇教員の研究経歴と専門分野
本講演会では、香川大学創造工学部情報コースに着任した 兒島 雄志准教授が紹介されました。冒頭では、香川大学創造工学部情報コース 山田 哲教授より、兒島准教授のこれまでの研究経歴と専門分野について説明がありました。
兒島准教授は、2013年に阿南工業高等専門学校特命助教として着任し、当初はソフトウェア工学を専門として研究・教育に携わってきました。その後、徳島大学大学院医歯薬学研究部助教として非線形力学分野へと研究領域を広げ、不良設定逆問題や数理最適化法、深層学習を組み合わせたアルゴリズム研究を進めてきました。博士号取得後は、最適化アルゴリズムとニューラルネットワークを融合する深層展開(Deep Unrolling)の着想を得て、研究を深化させてきました。香川大学着任後は、これまでに培った数理とAIの知見を、情報分野全般へ応用することを目指しています。
講演内容の概要
講演では、兒島准教授が取り組んできたトモグラフィ逆問題を中心に、数理最適化と深層学習を融合した研究の考え方が紹介されました。まず、CT画像再構成問題を例に、被ばく線量と画質のトレードオフという医用画像分野における課題が説明されました。従来主流であるフィルター補正逆投影法は、十分な測定数と低雑音を前提とするため、患者の被ばく線量が増加する点が課題とされています。これに対し、低線量条件下では、測定データと未知の断層画像の関係を線形逆問題として定式化し、目的関数を最小化する最適化問題として解く手法が有効であることが示されました。
続いて、連続時間力学系に基づいて逐次アルゴリズムを導出するフレームワークについて解説がありました。この枠組みにより、既存の逐次アルゴリズムを理論的に説明・改良できることが示されました。さらに、通信ネットワークや交通網など、グラフ構造を持つ問題へのトモグラフィ逆問題の一般化についても紹介されました。加えて、パワーダイバージェンスと、それに基づく逐次アルゴリズム、深層展開によるパラメータ推定の研究成果についても説明がありました。
参加者からの質問とそれに対する回答
講演後には質疑応答の時間が設けられ、参加者から「非常にスケールの大きいテーマだが、これから研究室に入る学生が『数理とAIの融合』に挑戦するために、まずどのような基礎から学ぶのがよいか」という質問が寄せられました。
これに対し、兒島准教授は、「線形代数と統計学の基礎をしっかり押さえることが重要であり、最初から非常に難しい数理の知識が必要なわけではない」と述べ、基礎的な学びの積み重ねの重要性を強調しました。
まとめ
今回の新任教員講演会は、香川大学情報コースが進める教育・研究体制強化の具体的な取り組みを紹介する機会となりました。数理とAIを融合した研究をはじめ、医用画像、ネットワーク、グラフ構造問題など、多様な分野へ展開可能な研究テーマは、これからの情報分野における実践的な学びと強く結びついています。
多様なバックグラウンドを持つ教員が加わることで、香川大学の情報コースは、次世代型情報人材を目指す生徒や学生にとって、より広い視野と可能性を提供する教育環境を整えつつあります。本講演会は、その方向性を示す活動記録として位置づけられます。
関連リンク
(参考)教員紹介 香川大学 創造工学部 准教授兒島 雄志
(参考)香川大学 :: 新任教員講演会(情報コース)を開催します

